曲目解説その2

 

 

坂本龍一作曲「青猫のトルソ」

 

 

 

坂本龍一さんのアルバム『US』には彼自身がライナーノートを書いていますが、『青猫のトルソ』についての箇所を引用すると「題名は僕の好きなマグリットとか、ああいうシュールレアリスムの絵のイメージですね。」ということです。でもでも、なんで青猫なの?なんでトルソなの?...教授は「曲の題名はてきとーにつけてる」っていうお話をどこかで読んだこともあるし、ならどうしてマグリットでどうしてシュールレアリスムなんだろう。この曲はドビュッシーやラベルのフランス和声のスタイルで書かれているのだけれど、それなら猶更、どうして印象派の絵のイメージじゃないんだろう?

 

 

 

 

 

ルネ・マグリットというと、不可思議な絵、見ていると考えこんでしまう、なぞなぞのような絵、を思い浮かべます。(マグリットの著作権は、死後50年とされている日本では切れていますが、死後70年とされているアメリカではまだ切れていなくてここに引用できないので、リンクをクリックして、マグリットの絵を掲載している日本のサイトに飛んでね)

 

 

 

多分一番有名。https://www.musey.net/1954/1993

 

 

 

「青猫のトルソ」という絵はマグリットにはないですが、「青い」マグリットの絵で思いつくのが、「青いりんご」の絵の「Listening Room」という題名の絵。https://www.musey.net/1955/1995

 

 

 

このマグリットの絵は、ビートルズの設立した会社、Apple Corpsのロゴマークのもとなんだそうで。なんでもポール・マッカートニーがこのマグリットの青りんごの絵を所有していることから、こういうデザインになったのだとか。https://www.pinterest.com/pin/380554237242826916/

 

 

 

 

 

「青猫」の猫は、教授が猫好きなことから来ていると思われます。

 

じゃあ、「青猫のトルソ」のトルソは? 少し悩みましたが、マグリットの絵の中でも「青空」はよく出てくるし、その青空のなかで羽ばたいている鳥のトルソの絵が描かれているものがもしかしてヒントかな? https://www.musey.net/410/411

 

 

 

なので、もしかすると、教授のイメージでは、この鳥の絵のように、猫のトルソの中に青空が浮かんでいるようなイメージなのかな?とここまで勝手に想像して、でも、やっぱり教授はこういう具体的なイメージを描くために、この曲を書いたとは到底思えないのよね。だったらフランス和声だからモネとかの印象派のイメージっていう発言になるはずだし。

 

 

 

マグリットのなかでも一番有名な作品のひとつで、特に哲学的に問題作はこれ。https://www.musey.net/1946

 

 

 

 

 

ごく普通に描かれたパイプの絵ですが、その下には「これはパイプではない」とフランス語で書かれています。これはミシェル・フーコーにも多大な影響を与え、彼は「言葉とイメージ」の考察について『これはパイプではない』を著作したそうです。教授は24歳のときに「La Dispersion, La Limiete, Le Sable」(分散・境界・砂)を作曲し、曲の冒頭にミシェル・フーコーからの引用をつけて、ピアニストがこれを語りながらキーボードを弾いたり、内部奏法するように指示しています。(私の『坂本龍一ピアノワークス1』CDに収録されています)教授はおすすめ図書にフーコーの哲学をのせるなど、フーコーの哲学にはかなり親しんでいらっしゃるようなので、このあたりに「青猫のトルソ」の題名の秘密があるのではと思っています。つまり「ネコと虹」とか題名はとりあえずなんでもよかった、ただテキトーにつけた、だけど「これはパイプではない」のマグリットの絵の題名でもある『イメージの裏切り』この辺りに題名の由縁があるのではと。  長くて書ききれなかった。。。つづく。

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